声帯麻痺の症状・症例
症状
声帯はのど仏の骨の内側にあって、息を吸うときは空気を肺に取り込むため左右の声帯は外側に広がり、声を出す時は声帯を振動させるために内側に寄ります。声帯が振動するには、左右の声帯の間にすき間がほとんどない状態となることが必要です。
声帯麻痺になると声帯が動かなくなるためこのすき間が大きくなり、声帯が振動しにくくなります。その結果、息がもれるような声(気息性嗄声:きそくせいさせい)や、ガラガラ声(粗造性嗄声:そぞうせいさせい)になります。
長く声を出すことができなくなるため、会話のときに何度も息継ぎが必要になったり、電話で話すのが難しくなります。また、飲み込むときに左右に声帯のすき間から気管に食べ物や水が入りやすくなり、ムセたりすることもあります。
症例1. 男性
右側の声帯が麻痺している例
症例2. 男性
左側の声帯が麻痺している例
症例3. 男性
左側の声帯が麻痺している例
診断
声帯麻痺の原因は非常に多種多様です。肺癌・甲状腺癌・食道癌・胸部大動脈瘤なども原因の可能性があります。
その他の原因として、上記疾患に対する手術、脳の疾患(脳硬塞、脳外傷、脳出血など)・長時間全身麻酔を施した後や、先天性の場合などもありますが、原因不明のこともあります。原因不明の中には、ウイルス感染によるものがあると考えられています。
声帯麻痺は、自然回復するものと、回復しないものがあります。全身麻酔後や、手術後の一過性の麻痺は、徐々に回復することがあります。手術の際に神経が高度の障害を受けた場合には、回復することはありません。声帯麻痺発症後半年から1年経っても回復しない場合には、もう回復しない可能性が高いです。
症状は殆どが嗄声ですが、麻痺した声帯の位置により、嗄声は軽かったり(麻痺声帯が正中近く)酷かったりします。誤嚥(ごえん)を伴う事も有ります(麻痺声帯の箇所が外側ですと、声帯を閉じた時に大きな隙間が出来、酷い嗄声になります)。両側麻痺は、時には呼吸困難を来す事もあります。
治療方法
全身麻酔後の麻痺に対してはなるべく早く短期間ステロイド療法を行います。
それ以外の麻痺は、声が出し難い場合や酷い嗄声の場合は手術をします。
当院での取り組み
通常、麻痺が起きてから6ヶ月(自然に治る可能性のある期間)経ってから手術します。
- 声帯に人工物(コラーゲンなど)を注入する方法
- 声帯に筋膜や脂肪を挿入する方法(全身麻酔下、入院手術)
- 甲状軟骨に窓を開け、押し込み声帯を真中に寄せる方法(一色の甲状軟骨形成Ⅰ型、ひどい嗄声の時は隙間が大きいので披裂軟骨内転術を行います。
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声のお悩みは他の病気とは違い、客観的には支障が少ないようでも、本人様にとって社会生活上の悩みは深刻です。一方で、より身近に声帯の手術を受ける事が出来る時代でもあります。当院医師と相談しつつ、一緒により良い生活を築いていきましょう。
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