鼓室形成術(Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ型)

炎症が高度な中耳炎・真珠腫に対して行う手術方法です。耳の後ろを5~7cm切開し、炎症の原因となる中耳や乳突蜂巣を徹底清掃し、洗浄を繰り返します。

長引く炎症がある場合には、中耳腔や乳突蜂巣 内には炎症性の肉芽が形成されており、これらを除去し清掃します。耳小骨の周囲にも肉芽が充満していることもあり、その場合は、耳小骨に過度の振動を与えないように、いったん耳小骨を外してから清掃を行い、その後人工耳小骨などを用いて音の伝導を再建します。

手術は、外耳道を大きく削除する外耳道後壁削除(オープン法)と、外耳道を自然な形に保ったままで真珠腫を取り除く外耳道後壁保存(クローズ法)があります。

当院では可能な限り外耳道後壁保存(canal wall up technique)で行います。ただし、真珠腫による骨の破壊が高度な場合や繰り返し再発している場合は外耳道後壁削除(canal wall down technique)の方法を選択することもあります。

本手術法の長所は、術後の外耳道の状態が正常に保たれるため、術後の治癒が早く得られ、水泳や補聴器装用などができるようになることが挙げられます。短所としては、外耳道を温存するために、視野や術野の確保が難しく、手術手技そのものが難しいことが挙げられます。

外耳道後壁保存(canal wall up technique)

当院では高度な技術を要するとされる外耳道後壁保存(canal wall up technique)を出来るだけ行うべく努力しております。外耳道後壁保存とは患者様の本来の外耳道の形を極力保った手術法で、より自然な元の耳の中(外耳道)の形を保つことで、「病気を取り除く」・「機能を取り戻す」だけでなく、患者様の違和感も少なく日常生活の質も保つ事ができるような治療に取り組んでいます。

例えば、小児においては外耳道後壁を削除すると水泳を行うことが困難となります。このような生活上の制限が加わることは、患者さんにとっては非常に辛いことです。我々は、聴力改善や真珠腫や炎症の病巣を除去することはもちろんのこと、「本来の耳の形態を取り戻し、少しでも日常生活が快適に送れるようにすること」も治療の目標としております。

症例.1

重度の中耳炎・真珠腫で来院。

低音がほとんど聞こえない高度な難聴で、外耳道に出血も見られました。手術を行うことにより、聴力もほぼ正常に戻り、自然な元の耳の中に戻りつつあります。

聴覚測定結果

症例.2

典型的な中耳炎・真珠腫で来院。

出血などは見られませんでしたが、聴力がかなり落ちていました。術後の回復も早く、術後2か月ほどでほぼ正常な聴力を取り戻し、術痕もきれいです。

聴覚測定結果

症例.3

重度の中耳炎・鼓膜穿孔で来院。

聴力もかなり低下しており、自然治癒の見込みが無いので手術を行うことになりました。術後の回復も順調で、聴力も日常生活においてほぼ問題ないレベルまで回復しています。

聴覚測定結果

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