内視鏡下副鼻腔手術(ESS: Endoscopic Sinus Surgery)

内視鏡下副鼻腔手術(ESS: Endoscopic Sinus Surgery)とは

副鼻腔が本来持っている空気清浄、加湿機能を手術によって取り戻すことを目的とし、ポリープや腫れた粘膜によって閉鎖してしまった副鼻腔の壁を一部取り払って広い空間にして、空気や鼻汁の流れを改善する手術です。副鼻腔の粘膜をすべて剥がしてしまうと副鼻腔の持つ本来の機能が失われるため、病的な部分のみを削り取るような形の手術を行い、残った粘膜が元の状態に戻るまで、内服薬、鼻洗浄、点鼻薬などによる術後治療が大変重要となります。

手術の流れ

鼻の孔から内視鏡と手術器具を入れ、モニター画像を見ながら手術を行います。術後、手術した箇所には 自然に溶けていく綿状の止血剤(サージセル、ソーブサン)を詰めます。(従来の副鼻腔手術は術後にガーゼを何本も鼻の中に詰め込み圧迫して止血をしていたため、ガーゼを抜く際に痛みや出血がありましたが、こういった術後止血方法は当院では基本的には行っていません)

手術中に出血が多かった方は術後数日間鼻の中にスポンジ(アイバロン)を入れておくこともありますが、このスポンジは一瞬で抜去できますので痛みを感じるよりは、すっきりとした感覚があります。鼻中隔矯正を同時に行った場合には、数か所に縫合を行いますので術後しばらくしてから抜糸をすることもあります。

術後のケア

術後の鼻の中は一時的に傷だらけとなり、全体からじわじわと出血がある状態がしばらく(1週間程度)続きます。鼻の中は術後数時間後から腫れてくるため2週間程度は鼻が詰まり、鼻呼吸はしづらい状態となりますが、徐々におさまってきます。また、発熱、頭痛などがおこることもあります。

術後は抗生剤やステロイド薬の内服、ステロイド点鼻薬などをしばらく(1~3か月)、続けていただきます。 そして食塩が入ったお湯による鼻洗浄をしっかり行っていただきます。

手術した副鼻腔の粘膜が落ち着くのには順調な方でも3か月近くかかり、それまでは鼻の粘膜は炎症をおこしやすく、粘膜の癒着などをおこしやすい状態です。癒着をおこすと「鼻の違和感が増す」「詰まりが治らない」「鼻出血が続く」などの症状をおこすことがありますので、外来でファイバー検査にて確認しながら適宜修正していきます。

鼻洗浄を継続することがきれいな副鼻腔に戻るために最も大切ですので頑張ってください。 術後3か月から半年の間にCT検査などを行うことがあります。

当院で用いている鼻副鼻腔手術器械

当院ではより安全な手術を行うために、様々な最新手術器械を導入しています。

ストルツ社 高解像度3D/2D内視鏡

複雑な立体構造を持つ副鼻腔の形には個人差があるため、従来の内視鏡(2D画像)では手術操作が難しくなる方もいます。3D内視鏡は3D眼鏡をかけて手術をすることで副鼻腔の立体構造をリアルに把握することができる器械で、腹腔鏡手術の領域では手術時間の短縮や術中操作のずれの減少などの効果があり、急速に広まっています。

ストルツ社の高解像度3D内視鏡システムによる副鼻腔手術は当院が2017年初に日本で初めて導入し、手術の内容にあわせて従来の2D内視鏡と組み合わせて行っています。

現在3D内視鏡下副鼻腔手術を担当している荻野は2011年に京都大学に旧型の3D内視鏡が導入された時から手術を行い、その特性や有用性について学会発表などを行ってきました。3D内視鏡下副鼻腔手術の経験のある医師は日本ではまだ僅かですが、その数少ない医師のひとりです。

メドトロニック社 ナビゲーションシステム

2015年よりMedtronic社製FUSION ENTナビゲーションシステムを導入し、より正確・安全な手術を行っています。ナビゲーションシステムとは診察時に撮った患者様のCT画像を術中のナビゲーションシステム(=位置情報システム)と重ね合わせ、副鼻腔内における手術器具の正確な位置をリアルタイムで知る事が出来るシステムです。

副鼻腔は複雑な形をしているだけでなく、目や脳に近い上に、出血すると人体に危険が及んでしまう血管も近くに走っています。ときには頭蓋底(頭蓋骨の底の部分)を損傷し、そこから脳の髄液が漏れる「髄液漏」などを起こすおそれもあります。こうした危険を回避し安全性の高い副鼻腔内視鏡手術を行うにあたって現代では必須といえるシステムです。当院で行うすべてのESS(内視鏡下副鼻腔手術)はこのナビゲーションシステムを使って行っています。