医療法人顕夢会京都耳鼻咽喉音聲手術医院

耳の病気 特に先天性真珠腫について

耳鼻咽喉科領域は他の診療科に比べ、多彩な病気を扱います。一般的な中耳炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎は皆さまにとってもなじみがあると思いますが、それ以外に、めまいや平衡機能障害、声帯ポリープや声が出にくいなどの音声の障害、嚥下(飲み込むこと)の障害、甲状腺腫瘍や頭頸部、頭蓋底の腫瘍、聴覚、嗅覚・味覚の障害などなど書ききれないほどです。

当院で特に力を入れているのは、①慢性中耳炎や真珠腫の治療(中耳難聴外来)②重症のアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、嗅覚障害(嗅覚外来) ③各種音声の障害(音声外来)です。今回は特に小児の先天性真珠腫について、ご紹介したいと思います。

真珠腫は簡単に言えば耳垢が塊りとなり少しずつ大きくなってゆくもので、癌のような腫瘍とは異なりますが、徐々に進行するという点では厄介なものです。初期の真珠腫では、ほとんど難聴や耳漏などの自覚症状は感じられません。大きく分けて、小児に多い先天性のものと、成人に多い後天性のものがあります。

先天性真珠腫は、胎生期に鼓膜の奥にある空洞(鼓室)に本来は存在しないはずの成分が残ってしまい、それが徐々に大きくなってくるものと考えられています。真珠腫が大きくなってくると耳の中の組織を破壊するため、聴力は低下しひどくなると耳漏(みみだれ)も繰り返すようになります。小児は自分では聴こえにくいという訴えをすることは少なく、また耳の中は外からは見えないため、症状が出るころにはかなり進展していることもしばしばです。初期ではまず症状は現れません。大人になるまで気づかれないこともあり、その場合は三半規管まで破壊されめまいを繰り返したり、頭蓋底の骨組織も溶かされてしまうため髄膜炎に至ることもある侮れない病気です。

先天性真珠腫の診断は、さほど簡単ではありません。鼓膜の内側に真珠腫が存在するため、普通に耳の中を診察しても発見されないことが多いためです。当院で手術を行った31症例について、診断に至ったきっかけは、表の通りです。

鼓膜の奥になんとなく白色の塊がありそうだと耳鼻科で指摘され、当院に紹介されたケースが9症例、片側だけの中耳炎を繰り返すために真珠腫を疑われて紹介された例が8症例、学校検診で発見されたのが5症例となっています。その他、滲出性中耳炎や慢性中耳炎という診断で通院されていましたが、治らないために当院に受診された例が5症例、手術前には真珠腫を疑っていませんでしたが、術中に判明した例も4症例ありました。早期に発見され治療することができれば、その分被害も少ないといえます。たくさんの子供さん方を診察する中で、この病気を疑って紹介いただける開業医の先生方には本当に敬服しております。その場合は親御さんにも本当に早く見つけていただいて良かったですね、と話をするのですが、一方で今まで何年も通院していたのに気づかれなかったケースもあります。耳鼻科医の立場では致し方ないとも思うのですが、親御さんの立場だとそうも言ってられません。

参考までに注意すべきは以下の点です。

1)幼稚園くらいまでは多くのお子さんが中耳炎に罹患されるため、区別がつきにくいのですが、小学生になっても特に片側ばかり中耳炎を繰り返す場合

2)通常の中耳炎であれば、抗生剤の内服や点耳薬で十分治りますが、抗生剤が効きにくい場合、または一旦耳漏が収まってもすぐに反復する場合

真珠腫について語ると何日も必要になるほどですので、今回はこれくらいにして、次回は実際の手術についての詳細を述べたいと思います。

 

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