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■院長の同級生からの便り Vol.5

今回は以前当院の2診での診察を担当していた楯谷君の投稿文です。彼とは大学時代は同じ水泳部に属し、卒業後も同じ耳鼻咽喉科に入局した親しい友人です。現在はWisconsin大学で精力的に基礎研究に取り組んでおり、多大なる成果を挙げています(誇張でなく数々の賞を受賞しており友人として誇らしく思っています)。 診察を受けたことがおありの方はお分かりだと思いますが、実際の人物はこれ以上ないというほど人当たりが良い好人物です。帰国した暁には、ぜひ再び2診で診察を担当してもらおうと考えていますのでご期待ください。

 
■アメリカ便り■
楯谷医師

学生時代からの広芝先生の友人の楯谷と申します。卒業後は同じ耳鼻咽喉科を専門とし、ひろしば耳鼻咽喉科にも毎週月曜日に昨年春まで2年ほど診療に伺っていましたので覚えておいでの方もおられるかと思います。
 現在はアメリカ合衆国のウィスコンシン州にあるウィスコンシン大学マジソン校という所で研究をしております。ウィスコンシン州はアメリカの中西部、五大湖の一つミシガン湖の西岸に面した酪農の盛んな州です。感覚的に言えばアメリカの北海道みたいなところで、ウィスコンシン大学はさしずめ北海道大学でしょうか。
私がやっている研究は声帯の再生というものです。声帯とはのどにある組織で声を作り出す元となっている部分です。歌手にポリープが出来て手術をしたという話を聞かれたことがあると思いますが、時には手術をしても跡(瘢痕)が残って声が良くならないことがあります。また誰でも年を取るにつれていわゆる「しわがれ声」になってきます。これは加齢の変化によるもので仕方がないこととされてきましたが、以上のような瘢痕の出来た声帯や「しわがれ声」になった声帯に対する治療法を開発することが私の研究です。現在所属している研究室の教授は女性であり、この分野では世界的に有名な教授です。
ニュージーランド、インド、韓国、日本など世界各国から彼女の元に研究者が集まって日夜新しい治療法の開発のために頑張っています。この教授だけではなく、アメリカではたくさんの女性研究者が第一線で活躍しています。これは文化的に男女ともに家庭を大切にする風潮があり出産育児を皆が支える環境があるためと思われ、日本も見習うべき点かもしれません。
 さて私の住んでいるウィスコンシン州はアメリカでは田舎にあたり非常にのんびりしたところです。季節折々の楽しいイベントがありアメリカ人の素朴な生活を垣間見ることが出来ます。いくつか印象的だったものをご紹介しましょう。

アメリカンフットボール
アメリカでは大学スポーツがプロスポーツと並んで人気があり、中でもアメリカンフットボールは老若男女問わずもっとも人気のあるスポーツです。我がウィスコンシン大学にはバジャーズというチームがあり、大学町であるマジソン市にはいたるところ、街角の時計、救急車、ごみ収集者、果ては救命用のヘリコプターに至るまでBagersのマスコットであるバッキー君を見ることができます。全然可愛くないのですが、見慣れてくると愛着がわいてくるから不思議なものです。
大学のアメフトのシーズンは9月に始まります。中部、西部などの各地区でリーグ戦が行われさらに各リーグの上位同士でトーナメント戦が行われ全米ナンバーワンが決定されます。バジャーズは残念ながら地区リーグで敗退してしまいましたが、スタジアムはチームカラーの赤と白で埋め尽くされ応援はすばらしいものがありました。

ハロウィン
ハロウィンとは毎年10月31日に行われる行事のことです。カボチャのおばけなどでご存知の方も多いと思いますが、日本でいうとお盆のようなもので、もともとの起源はさまよい出てくる悪霊を仮装で驚かせて退散させるというヨーロッパの宗教行事だったようです。現在では宗教的な要素はほとんどなくなり、子供たちが仮装をして近所を回ってお菓子を貰うというイベントになりました。ハロウィンが近づくとスーパーのちらしに悪魔や天使、なかにはサムライなどのコスチュームが載るようになり、当日の夜は子供たちが自慢の仮装で両親に連れられて「Trick or treat?」(お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ)と叫びながら、近所の家を回ります。我が家の周りでも沢山のかわいい怪獣やおばけがお父さん、お母さんに連れられて歩いてました。

クリスマス
年末年始の最大イベントといえば日本ではお正月ですが、こちらはクリスマスです。12月に入ると町中の家が庭や玄関を赤や青のライトでデコレーションしはじめ、町はいっきにクリスマスモードに突入します。中旬を越える頃には皆冬休みを取って、職場はどこも開店休業状態になります。我が家でもクリスマス気分を味わおうと大きなクリスマスツリーを買いました。(何とこれが4千円!)。せっかくなので日本に持って帰ろうと思っているのですが、果たしてこれを飾れるくらい大きな家に住めるのかが悩みの種です。

アイスフィッシング
雪はそれほど降りませんが、ウィスコンシンの冬はかなり冷え込みます。特に今年は数十年ぶりの寒波に見舞われ、マイナス20度を切る日もありました。建物の中は暖房がとてもよく効いているため非常に快適に過ごせるのですが、家に閉じこもってばかりいては面白くないので研究室のアメリカ人と一緒にアイスフィッシング(氷上釣り)に行ってきました。日本で氷上釣りといえばワカサギ釣りが思い浮かびますが、こちらでつれたのはブルーギルばかりでした。ただ、水がきれいなせいか変な臭みもなくフライにするとなかなかイケました。

 

■院長の同級生からの便り Vol.4

 以前にドイツからの便り、として同級生の藤本君からドイツの医療事情などを書いてもらいました。今年の7月から、医療従事者の間では超有名なアメリカのMayo Clinic(メイヨークリニック)に優秀な彼は引き抜かれ、活躍しています。今回も無理をお願いしてアメリカの医療事情についても書いてもらいました。

 
■アメリカ便り■
藤本利夫
Clinical Fellow
Division of General Thoracic Surgery, Mayo Clinic

 前回はドイツのフライブルグ大学に勤務していた時に投稿させていただきました(広芝先生から贈られた極上の焼酎につられて)。あれから一悶着あり、といいますのは、私をドイツに誘ってくださった教授が予定を早めて退官されたためスタッフが一新され、私も日本に帰ろうかと思案していた矢先にたまたまアメリカのメイヨークリニックから話を頂いたわけです。

 メイヨークリニックといっても日本では馴染みが少ないかもしれませんが、アメリカでは常にBest HospitalのNo.1か2にランキングされる超一流病院で、大統領や政治家、海外から自家用ジェット機でやってくる患者さんもめずらしくありません。私自身、名前は聞いたことがあっても、実際どこにあって、どのような病院なのか知りませんでしたし、なによりアメリカに長期滞在するのは初めてなので不安だらけでやってきました。

 ロチェスターの町に初めて降り立った日は忘れません。―――Nothing。なにもないのです。ただし病院以外(写真参照)。ロチェスターの人口は約8万人。そのほとんどが病院関係者といいます。これに対し、病院の年間訪問者数は約150万人。街のほとんどの建物はメイヨー所属であり、なんと病院の経営するメイヨーユニオン銀行まであります。

 なにがこの病院をここまで大きくしているのか、患者さんをひきつけているのか、実際に働いてみて気づいたことがいくつかあります。第一に患者第一主義(Patient comes first.)。患者さんの満足度に最大限の重点をおき、医療スタッフの質の向上のみならず、患者さんの教育(いかに病気とつきあうか)にも力をいれています。第二にスタッフの満足度。不満をそのままにしておかず、医師サイド、看護師サイド、パラメディカルサイド、事務サイド、でいかにお互いの仕事を効率よく、なお質を落とさず行えるか、徹底的に検討を重ねています。もちろんコスト面での検討も重要です。第三に、治療が多数の目にさらされていること。医師、看護師、薬剤師、疼痛コントロールの麻酔医、など、術後の患者さんに多数のプロフェッショナルが関わっており、他科との連携も非常にスムーズです。そして最後に雇う医師の質をきわめて厳しく選択していることはいうまでもありません。

 将来日本だけでなく、海外でも一流の医療に触れられたらいいな、くらいの気持ちで、研修医のときにアメリカの医師試験を受けていたのですが、そのころはメイヨーにくるなんて夢にも思いませんでした。いまもって何故雇われたか不明ですが、おそらくドイツでお世話になったHasse教授(前ヨーロッパ胸部外科学会会長)がよい推薦状を書いてくださったのでしょう。さて、アメリカで臨床を行うには、いくつかの関門があります。まず、ライセンスの問題。以前は医師不足のため、比較的楽にライセンスを取れていたのですが、ここ10数年はアメリカにおいても医師過剰と、外国人レジデントを減らす目的で、狭き門となっています。まずECFMG Step1(基礎), Step2(臨床)と分かれた日本の医師国家試験に相当する試験にパスする必要があり、さらにCSAと呼ばれる実地試験に合格するとようやくアメリカで研修医ができる、というCertificateがもらえます。ただ現在もシステムが変わり続けており、実地試験は廃止の方向で、臨床試験をより実地に近い形にし、英語の能力も合わせてテストできるような形に変えているようです。いずれにせよ、日常英語に接することの少ない、はては英語で診療することなど皆無である日本の医師にとって、狭き門であることは間違いありません。このCertificateをもって、数年レジデント(研修医)を行うと、各州のライセンスを習得する試験を受ける資格を得、それもパスしてようやく正規の医師として働けるわけです。しかしそれで終わりではありません。アメリカでStaffとして仕事を得るためには、各種の専門医を習得する必要があり、この習得にはたとえば私の専門である胸部外科でいうと、5年の一般外科レジデントのあと、3年の心臓胸部外科のレジデントを終了する必要があります。日本のように2−3年目の医師が一人前の顔をして外来をやる、ということはありえません。晴れてスタッフとなれば、収入は日本のベテラン外科医の数倍になりますが、アメリカのレジデントは食べるに精一杯の収入しか得られず、若い医師とベテラン医師の収入格差の少ない日本のシステムとどちらがよいかは一概には言えません。

 さて、私個人に話を戻すと、ポジションはクリニカル(臨床)フェローといって、要はレジデントとスタッフの橋渡しのような役割です。すでにトレーニングを終了したが、まだスタッフの口を見つけていない、もしくは特殊分野のため、さらなるエクストラトレーニングを必要とする、といった人が得る立場です。特に大きな病院では一人のスタッフ外科医が一日に何件もの手術を行うため、2−3件の手術を平行して同時に行うことも茶飯事です。そのため、ある程度手術、病棟管理を任せられる人材が必要なわけで、それをフェローが行うわけです。フェローはすでに経験をつんだ医師として扱われるため、ある程度の裁量はありますが、スタッフ医師に比べると決定的に裁量権が狭いことは否めません。これはアメリカの医療システムに根ざす問題です。90年代からアメリカ医療はマネージド・ケア型へ大きく様変わりしており、医師にも経済的な倹約性、生産性が求められるようになりました。保険会社がその患者さんの加入する保険内容によって、行える医療を厳しく制限しており、いかに少ない検査、効率よい治療を行えるかで、病院の収入が変わってきます。これは無駄な検査、治療を省く効果がある一方、望む医療を受けられない状態を生み、医師も保険会社のいう医療だけを予算に応じて提供する一介の医療サービスコンサルタントに成り下がる危険性(実際アメリカではそうなっているのですが)があります。マネージド・ケア型医療では、状況をよく把握したコンサルタントスタッフが大部分を管理しなければならず、下で働くものの裁量権は狭めざるをえません。

 メディケア(アメリカ人の大部分が加入する老人保険)が定めた入院日数を超えてしまうので、お金が払えない、といって、胸の傷が開いたまま退院していった患者さんをみてしまうと、アメリカ型へ急速に移行しつつある日本の医療体制は、果たしてそれでいいのか、疑問に思ってしまいます。理想の医療体制というのは存在しません。それは各国の経済状況、倫理感、技術体系の枠内で、最大限努力して得られる一時的な状態のことであり、政府の目指しているアメリカモデルは決して現在の日本人にとって理想ではない、と思います。日本にいるときは、日々の忙しさにかまけて、医療体制について考えることも避けていましたが、一番適切な立場にいる医師が声を大きくしなければ、将来の患者さんを守ることはできない、ということをあらためて感じています。

 少々硬い話になりました。最後に私の1日を紹介します。朝5時半より病棟回診。必要な検査をオーダーし、7時よりカンファレンス。コンサルタントスタッフと手短に再度回診した後、8時前より手術室に直行し、2−3件の手術をこなした後、夕方再び回診して帰宅します。帰宅後は寝るのみ。平日は矢のごとく過ぎ去っていきます。それでも当直のない週末は、写真のような、湖のほとりを散歩して読書したり、スポーツジムへ泳ぎにいったり、また近隣の町へドライブしたりして楽しんでいます。

 外国生活が長くなると、しきりに日本の風景、人々のよさが思い出されます。来年、帰国した折は、どこかの病院に勤め、他科のスタッフ、看護師、患者さん方と気兼ねなく話し合いながら医療が行えることを楽しみにしています。
2004年9月末日

 

■院長の同級生からの便り Vol.3

今回水泳部の同期の金井医師からの投稿文を紹介します。彼は、いかにも内科医らしく温和な性格で、淡々と診療を行うタイプです。西洋医学は原則的に、病気を「悪」とみなし細菌は抗生剤で叩く、癌は切り取る、といった考えに基づいていますが、最近は病と共存するという東洋的な考え方も重要になってきています。病と闘う、というよりは、まさにその東洋的な雰囲気や無常観を併せ持ちながら診療に当たる医師兼牧師のような人間であります(独断的な批評ではありますが・・・)。現在はアメリカでも有数の基幹病院であるMDアンダーソン病院で活躍しています。

 
■アメリカ便り■
金井雅史 医師(MDアンダーソン病院)

学生時代、水泳部で同級生だった広芝先生より海外の医療状況について何か書いて欲しいと頼まれましたので、今回投稿させて頂きました僕は日本にいる時は消化器が専門で胃カメラや大腸カメラを主とした仕事をしていたのですが、今年1月よりアメリカテキサス州にあるMD アンダーソンがんセンターという施設で、主に胃がんの研究に従事しています。
この施設はアメリカでも1,2位を争う大きながんセンターです(写真)。

 

もともとは綿花で巨大な富を築いたMD アンダーソンという人が世のため人のためになるようにと残した財産でこの施設は作られました。病院の正面玄関に当たるところは本当に一流のホテルのロビーを想像させる作りで、日本の病院のイメージはほとんどありません。患者の数十パーセントが海外からの患者といわれており、世界各国からも治療を求めてたくさんの患者さんが集まります。日本語も含めた各国の言葉に対応できる通訳の方もおられるようで、遠方からの患者さんが泊まれるよう、病院に隣接したホテルもあります。

最近の医療に関するトピックスの一つに肥満に対する胃の縫縮術というのがあります。きわめて単純な発想で胃をくくって膨らまなくさせるという手術なのですが、当然食べられる量が減って体重は減ります。この治療が効果があるから10代の若者にまで手術適応拡大すべきか否かという議論までなされているようですが、日本では考えられない治療の一つです。

ところで日本では胃がんの患者さんはまだまだ多いのですが、不思議なことにここアメリカでは胃がんはまれながんです。食事、体質の差などさまざまな要因が絡んでいると考えられています。アメリカでは胃がんよりも大腸がんの問題の方が深刻です。日本でも食事の欧米化に伴い最近大腸がんの患者さんが増えてきています。胃がん、大腸がんとも早期発見すれば治るがんですので皆さんも定期的に検診等受けられることをお勧めします。

 

■院長の同級生からの便り Vol.2
前回、ドイツ在住の藤本医師から投稿いただきました。今回はまた新たにスペイン在住の山本医師(呼吸器外科)からの便りを紹介します。彼は大学時代の水泳部で一年下に在籍しており、我々は一時期は非常に熱心に水泳に打ち込んでいました。卒業後は違う科に勤務してしまうとなかなか接触する機会が持てないのですが、水泳部の繋がりは意外に強く、今でもお互いに情報交換をしています。彼は縁あって昨年は耳鼻科を学びたいとのことで、当院で診療に携わっていたこともあります。

スペインの国民性は、几帳面なドイツ人と対照的に陽気で情熱的な感じというのが一般的な見方だと思います。実際私も約10年前に3週間ほどスペインでの貧乏旅行を経験して、なんと気楽なところだと半ば感心し半ばあきれた記憶があります。日本のラッシュに相当する時間帯(8〜9時くらい)に街に出ると、まだ街は目覚めていないような感じでした。ようやく10時くらいになると人が起き出してくるものの、1時か2時になると昼寝(シエスタ)の時間となり、夕方から深夜にかけて俄然活気づいてくる、といった毎日でした。さて、実際在住している人の印象はどうなのでしょうか。

 
■スペイン便り■
山本一道 医師(バレンシア大学付属病院胸部外科 呼吸器外科)
私は、呼吸器外科医(主に肺がんの手術)として日本で6年半病院に勤務した後、2001年よりスペイン・バレンシアのバレンシア大学付属病院胸部外科のアシスタント・ドクターとして臨床に従事しております。こちらでは気管や声門下(声帯の奥)の狭窄による呼吸困難などの手術も行っているため、個人的都合でしばらく日本に帰国していた間は、耳鼻科領域の診察・治療の習得ためにひろしば耳鼻咽喉科にしばらく研修させていただいておりました。

スペインという国はEUの国のうちでは遅れている国のうちの一つで、正直なところ医療レベルだけでなく患者さんの権利意識などすべての面において一部の例外を除き日本に比べてまだまだ、と感じています。これらは価値観の違いからきていると思われるため、おそらく将来的にも日本のような環境にはならない、と考えています。これはどちらが理想的か、という問題ではなく、どちらがその国にあっているかという問題なので、そういう意味で海外の追従をすれば日本の医療が理想に近づくか、といえばそうではない、というのが私の実感です。たとえば、スペインでは公的医療保険は無料(給料から保険はひかれていますが)ですが、患者さん側に医者を選ぶ権利はありません。医者の技量にかかわらず、住んでいる地域に割り当てられた医者にしか診てもらえないことになっています。したがって、評判の良い医者にかかりたい人は日ごろから高いお金を払って私的保険に入り、その医者が個人的に開いている保険の利かない診療所にいく必要があります。欧米では差はありこそすれ、お金を払わないと自分の希望する医療を受けられない制度が一般的であるように思います。

実際の医療現場では、日本とやっていることはあまり変わりません。私の場合、指導医と研修医の間に位置する立場のため、上司の指導の元に手術を執刀したり上司の手術の助手をする一方、気管支鏡検査や入院患者の診察、ドレーン留置(胸に管を入れる)などの処置、研修医の指導といった種々の仕事を忙しくこなしています。

東洋人であるという人種的ギャップ(有色人種の医者は病院内に私とアラブ人が一人いるだけです)、言葉の問題など多くのハンディキャップを抱えているため、常に回りに不審の目を向けられながら多大なプレッシャーを背負って医療をすることになり、時に「何でこんなつらいことしているのだろう」などと考えたりもしますが、理解ある上司の保護の元、毎日を何とか乗り切っております。

バレンシアといえば、当然オレンジですが(街路樹はオレンジです)、それ以外にもスペイン三大祭の一つ、火祭りやパエリアの発祥地、最近ではサッカーのチームが強いことでも有名です。地中海沿いの温暖な気候で、雨もほとんど降らない住むには快適な場所です。

 

これからも定期的にホームページにこちらの医療や生活について投稿させていただこうと思います。これからもよろしくお願いいたします。

 

■院長の同級生からの便りVol.1
私は大学時代水泳部に所属していました。とはいっても、体育会の水泳部ではなく、医学部水泳部(医学部は6年制のため医学生のみの大会がある)で、そんなにハイレベルではなく、私自身もスイマーとしては素人に毛の生えた程度です。クラブで一緒にやってきた仲間たちも、いまや医師としていろんな方面で活躍しています。研究室で最先端の研究に励んでいる者もいれば、海外で臨床の現場に携わる者もいます。そんな仲間たちの声も、可能な範囲で発信してゆきたいと思います。ご来院の際にご感想をいただければうれしいです。

まずはじめに、現在ドイツのフライブルグ大学の胸部外科で勤務している藤本医師から寄稿してもらいました。彼は日本に居たときは京都の桂病院に勤務していました。2002年の6月に当院で初めて「患者さんへの講演会」を行ったときにゲストとして来てもらいました。事前の宣伝不足もあり、お越しいただいた方は5,6名(涙)でしたが・・・。外科医というと今流行りの財前教授(唐沢寿明)をイメージしますが、実際はユーモアに富んだ人物で外見は普通のおじさん(失礼!)です。体格も水泳部に所属していながら、どちらかといえば柔道に適した体格です。しかし、学生時代から非常に優秀でした。海外で臨床医として仕事を得るのは困難であるにもかかわらず、果敢にもドイツでも有名な大学病院に飛び込んでゆき、大活躍をしている(本人談)らしい。今回はドイツでの医療事情についても書いてくれています。
 
■ドイツ便り■
藤本利夫(フライブルグ大学 胸部外科勤務)
昨年10月末からここ南ドイツのフライブルグにきております。以前北ドイツのエッセン市に滞在していたのをあわせると、3度目の冬をドイツで迎えたことになります。ヨーロッパの冬は厳しく、なによりも日照時間が日本に比べ格段に短いことがこたえます。折角晴れたと思ってもすぐに曇りだし、雨、雪。一日のうちに何度も気象が変わり、冬の間は落ち着いて喫茶店のバルコニーでコーヒーを楽しむ時間も少なくなります。そんな暗い冬に楽しみを与えてくれるのが、11月半ばから始まり12月24日まで続くクリスマス市です。町の広場に、小さな屋台が所狭しと立ち並び、たくさんの地元の人や観光客(主にフランスから)で賑わいます。売っているものはさまざまで、蝋燭や飾り物、お菓子やソーセージ、なによりも名物は、甘くて温かい赤ワイン(グリューバインといいます)です。凍るような冬の夜、屋台でその赤ワインを飲みながら、さまざまな照明に照らされた市を見ていると、闇の中の宝石をみているようで、幻想的な気分になります。
クリスマスが終わると街はまた落ち着きを取り戻し、以前の暗い冬に戻ってしまいますが、2月にはカーニバル、3月にはイースターがあり、ドイツ人も暗い気分を晴らそうとさまざまなお祭りを催しています。
日本では春の訪れを感じさせるのは梅や桜でしょうが、ドイツではアスパラガスとイチゴがそれにあたります。5月もおわりになると、道端に売りにだされるのですが、そのイチゴのすっぱいこと。日本のようにきれいに粒をそろえたり、包装したりもされておらず、形もいびつで、畑でとったそのままですが、なれるとそのすっぱさがいかにも自然の味で、やみつきになります。私もそれを楽しみにしながら寒い毎日を過ごしています。
 
次にこちらの医療について考えたことを少し書かせていただきます。
こちらでは日本と同様、胸部外科の病棟医として働いておりますが、やはり日本とはシステムが大分違います。まず、日本のように、主治医と患者さんが一対一の対応ではないということ。基本的に病棟医がその階に入院している患者さんすべてを診察しますが、時間外は、すべて当直医にまかせる形になります。また術後急性期をすぎ、慢性病棟に移った患者さんは、そこの病棟医が受け持つこととなり、日本のように、入院から退院まですべて一人の主治医が受け持つといったことはありません。退院後は病院からは一切離れ、各個人の家庭医(かかりつけの開業医)がすべてフォローアップすることとなります。利点としては、治療が多数の目にさらされるということ、欠点としては日本のような患者ー医師間の深い関係は築きにくい、といったところです。
第二に、保険の種類によって対応が違うということ。ドイツでは日本と同じく、国民健康保険にあたるものがかなり普及していますが、裕福な人は、私的保険に加入しています。日本のように、国民保険にさらに私的保険、というのではなく、私的保険なら私的保険のみ、ということです。そして、私的保険を持つ患者さんは、すべて部長が担当医となり、通常の病棟医が受け持つ患者さんとは部屋も別個、一線を画す形
となります。これはドイツでも医療財政の高騰から、一般保険の患者さんに対する医療内容、薬剤、手技などが著しく制限されているのに対し、私的保険ではほぼ際限なく行え、さらに部長が診る特別料金が課されるためです。しかし一概に私的保険がいいとは言えません。なぜなら無駄なICU管理や余分な薬剤を使われてしまう可能性がありえます。
 
最後に、やはり日本は医療的にもきわめて恵まれた国だということを指摘させていただきます。欧米では私的保険が示す通り、一部できわめて手厚い医療が行われる代わり、ろくな医療も受けられずに路上で飢えて、もしくは凍えて死んでいく人が多数いる、ということです。よく、日本の外来は3分診療などと風刺され(もちろん、ひろしば先生はそんなことはないでしょうが)、欧米の手厚く時間をかけた外来と比べられますが、これは比較することが間違っています。日本ではほぼ国民全体に一定レベルの医療が施されるかわり、一人あたりに物理的に時間がかけられない事情があります。医師の数自体も、患者さん一人当たりにかかわる数としては欧米の数分の一です。欧米の医療は、一部のお金持ちに対し、ゆっくりと時間をかけそれこそセカンドオピニオン、サードオピニオン、などとあらゆる手を尽くしますが、一方で同じ病院のすぐ外の路上でその何十倍もの人々が医療を受けられずいる、という現実を知る必要があるのではないでしょうか。
以上外国生活で感じたことを思いつくままに書かせていただきました。
 
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