耳硬化症の症状・症例

鼓膜の振動を内耳に伝える耳小骨の一つ(アブミ骨)が固着してしまい、音の振動が伝わらない状態になってしまう病気です。

欧米人に比べ日本人では比較的少数ですが、珍しいというほどの病気ではありません。20代頃から徐々に難聴が進行し、女性の方が多く、妊娠や出産を契機に難聴が進む場合もあります。片耳だけでなく両耳の場合もあります。また、家族性に発症するケースもあります。

外耳道や鼓膜の所見は正常ですので、通常の診察のみでは診断がつきません。実際には耳鼻科を受診して検査しても耳硬化症と診断されないこともしばしばあります。聴力検査、耳小骨筋反射の検査、CTを撮影して診断しますが、最終的に手術によってアブミ骨が固着していることを確認することで確定診断されます。耳硬化症の95%以上は、手術(アブミ骨手術)で改善されます。

本疾患は、徐々に進行するものであり、薬物治療は無効ですので、進行しすぎないうちに手術を行うことが必要です。手術は、アブミ骨を摘出して人工の代用アブミ骨を留置するアブミ骨手術を行い、聴力の改善を図ります。高度な技量と経験を要しますが、適切に手術を行えば聴力の改善はほとんどのケースで期待できます。

聴力検査から耳硬化症を診断

左耳アブミ骨手術 -術前-
見た目には特に分かりませんが聴こえの検査では聴き取りにくい音域があります。より専門的な診断の中で耳硬化症と判断されました。このように耳硬化症は表からは見えずに、そのまま過ごしてしまう事もあります。

アブミ骨手術を施し聴力回復を図る

アブミ骨手術 -術後(4ヶ月)-
アブミ骨手術で聴力が徐々に回復したケースの聴力検査グラフ。見た目に目立った変化はなく、水泳や飛行機に乗る事も全く問題ありません。

アブミ骨の摘出手術

アブミ骨の摘出手術
アブミ骨が固着し振動を上手く伝える事が出来ない為、これを代用アブミ骨(テフロンワイヤーピストン)と交換し振動を伝えるようにします。

代用アブミ骨移植

代用アブミ骨移植
アブミ骨の代わりに、代用となるテフロンワイヤーピストンを使うことによって振動を内耳につたえることが出来ます。内耳は圧変化を感じ、平衡感覚や末端神経などに非常に敏感な器官でもあります。術後一時的にめまいを生じる事があります。

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